第67章 【ユウアイ】
夜も更けた11時過ぎ、その頃になると私は決まってソワソワしながら携帯を眺める。
それは大抵、英二くんがこの時間帯に電話をくれるから。
その時間はちょうど私がベッドに入る頃。
そこから30分くらい話しているうちに、彼の声が子守唄のように心地よく響いて、そのまま眠りに落ちることも珍しくない。
英二くんはいつももっと遅くまで起きているようだけど……
美沙が泊りに来てくれている今日もそれは変わらずに、11時12分、手の中の携帯がLINEの無料通話の通知音を知らせた。
「あ、英二からのラブコール?」
「ラブコールって……ちょっとだけ、失礼しますね?」
ニヤリと面白がって笑う美沙に恥ずかしく思いながらも、英二くんからのLINEの通話開始をタップしようとした。
でもその瞬間、ちょっと貸して?、そう言った美沙によって携帯は素早く奪われていて、え?って思った時には、はいー?、そう美沙が話し始めていた。
「あ、切れちゃった」
「切れちゃった、じゃないですよっ!」
頬を膨らませて携帯を取り返そうと手を伸ばすも、その瞬間、またなりだした着信音。
あ、また掛かってきた、そう相変わらず美沙が楽しそうに笑って電話を受ける。
もう、美沙ったら、早く英二くんの声が聞きたいのに……
そう焦る一方で、楽しそうに英二くんと話す美沙の笑顔を、仕方がないな、なんて思って眺める。
ああ、なんか英二くんと美沙は何をしても許してしまう……
私、好きな人にはやっぱりとても甘いみたい、なんて思って苦笑いした。
それから英二くんと話ができて、美沙の前だから恥ずかしてスムーズに話せない時もあったけど、それでもやっとちゃんと話ができて……
英二くんはやっぱりすごい数の着信やLINEが来ているそうで、私だけなにも変わらないのに英二くんだけ大変そうで、本当に申し訳なくて、どれだけお礼を言ってもいい足りなくて……
でも英二くんは私がなんともなくて良かったって、それから、疲れたけど私と話ができたから充電完了!って言ってくれて、すごく嬉しかった。