第67章 【ユウアイ】
『……ねぇ、英二……』
しばらく2人の楽しそうな笑い声を聞いていたオレに、もう一度市川が声をかける。
冷やかしの声とは打って変わって、真面目な市川の声を意外に思いながら、なんじゃらほい?、なんて問いかけると、うん、あのさ、そう市川はもう一呼吸おいてからゆっくりと話し出した。
『ありがとう、璃音のこと守ってくれてさ……、今日のことだけじゃなくて、空港でのことも聞いたよ、あと卒アルの話も』
ああ、本当に言いたかったことはこっちか……
市川、やっぱ、いいやつだよな……
「……市川こそ、あんがとね」
『え?なにが?』
「小宮山と友達になってくれてさ、ずっと市川と仲良くなりたがってんの、見てきたからさ……」
ずっと見てきた……
庇われて、戸惑って、拒んで、それでも市川に惹かれて行く小宮山を、ずっと……
「小宮山、中学の頃のことがあったから、すげー臆病でさ……、そんでもそんな小宮山のこと、理解してくれて……ほんと、サンキュ」
市川がいなかったら、きっと小宮山は臆病なままだったから……
市川のおかげで、学校でもたくさん笑顔を見れるようになったから……
そんなオレの素直な感謝の気持ちに、なっ、なに言ってんのよ、そう市川は意外そうに、でも恥ずかしそうに返事をして、それから、あんたに感謝される筋合いないわよ、なんて少しぶっきらぼうに続ける。
『璃音は私が気に入って、そうしたかったからしただけ!、私より先に璃音と親しくなってたからって、偉そうにしないでよね!』
偉そうになんてしてねーよ、そう苦笑いしながらも、それでも市川も小宮山を大好きなのがわかって嬉しく思う。
『まあ、これからは何かあったら私も手助けしてあげるから、遠慮しないで頼ってきなさいって!』
お代はハンバーガー、お腹いっぱいでいいからさ、そう言って上から目線で言ってくる市川に、やだよ、破産すんじゃん、そう言って苦笑いした。