第67章 【ユウアイ】
『あの、英二くん、すみません、今日はそろそろ……』
話が一旦区切りをついた時、そう小宮山が申し訳なさそうに切り出した。
ああ、そうか……、時間にしたら、まだいつもの半分くらいしか話てないけれど、小宮山、今日は市川と一緒だもんな……
うん、そだね、本当はもっとその声を聞いていたかったけど、そこは素直に引き下がる。
『え……?あ、はい、いいですよ?ちょっと待ってくださいね?』
ん?小宮山、なに市川と喋ってんだろ?、そう思いながら待ってると、あの、美沙が最後に英二くんとお話ししたいそうなので……なんて言われる。
へ?って思って、まぁ、別にいいけど、なんて答えると、いつものように「おやすみ」を言い合ってから、小宮山はもう一度市川に電話を変わった。
『あ、英二ぃ……』
「……どったのさ?」
ちょっと含みある市川の呼びかけ。
嫌な予感しかしないのは、最初にからかわれたから……
その時と同じ雰囲気を漂わせる市川の声に、思いっきり身構える。
『璃音ってさ、抱き心地、いいよねー、胸がむにゅーって柔らかくてさー?』
「にゃっ!」
なっ、なんてこと言うんだよっ、確かに滅茶苦茶いいけどさー!!
そういや市川、前に教室で小宮山の胸、鷲掴みにしていたし、もしかしてそんな趣味あるわけー!?
そうあんぐりと口を開けすぐに返事が出来ないでいると、美沙っ!なんてこと言うんですかっ!、そう電話の向こうで小宮山の慌てる声がした。
『今夜は私ー、璃音と一緒にベッドでくっついて寝るから〜……羨ましいでしょー?』
『う、嘘ですよっ!別にお布団、敷いてるじゃないですかっ!』
あははー、そう楽しそうに笑う市川と、もう!、そう呆れ気味な小宮山の声。
はぁ……、きっとこれからもこうやって市川にからかわれ続けんだろうな、なんてちょっと憂鬱で頭を抱える。
だけど、携帯の向こうから聞こえた楽しそうな小宮山の笑い声に、ま、それもいいか、なんて思ってオレも笑った。