第67章 【ユウアイ】
『ごめんなさい、私、美沙に話しちゃいました……』
「別にいいよん、小宮山が話す必要があるって判断したんだからさ、そんなことより、オレこそゴメンな、今日……」
『いいえ、本当にありがとうございました、私だけしっかり守ってもらっちゃって……』
「そんなことないって、オレの方こそあんがとね、オレのかわりに乾汁、飲んでくれようとしたんだって?」
あのお昼休みの一件以来、やっと小宮山と話ができて……
ゆっくり話したいところなんだけど、ずっと小宮山の後ろで市川がヘラヘラと会話の邪魔をしてきて、なかなかそんな雰囲気じゃなくて……
「今、どこ?市川んち?」
『あ、いいえ、私の家に泊まってもらうんです』
へー、市川、小宮山んとこに泊まるんだ……
オレもまた朝まで小宮山とずっと一緒にいたいな……、そう夏休みの期間限定の同棲生活を思い出す。
その途端、羨ましいでしょー、なんて携帯の向こうで騒ぐ市川。
あー、本当にうっさいな!羨ましいよっ!、なんて聞こえないのはわかっていても、ついついそんな風に言い返した。
時々、割って入る市川の声に苦笑いしながらも、理科室でバラバラになってからのこととか、オレが教室を飛び出したあとのこととか、色々、小宮山に教えてもらって……
そういや桃からも沢山着信あったな……なんて思って、それにしてもなんで芽衣子ちゃんがそんな嘘付くんだよ……てモヤッとして……
多分、その気持ちが声に現れていたのか、鳴海さんだって辛いんだと思います、なんて小宮山に軽く諌められて……
自分だって本当は面白くないだろうにさ、小宮山ってやっぱり、すげー大人だよな……、そんな風に改めて自分の人間の小ささを思い知った。
それから、市川とのやりとりだとか、今日、小宮山ん家に行ってからのこととか、市川本人の前だからか控えめに、でもすごく嬉しそうに話してくれて……
ああ、小宮山、本当に市川のこと大好きなんだな、そう思ったら嬉しいんだけどちょっと妬けた。