第67章 【ユウアイ】
「小宮山……心配してんだろうな……」
バイトが終わり、お疲れ様でしたーと笑顔で挨拶すると、自宅への道のりを急ぐ。
電車に揺られながら思い浮かべるのは、最後に見たオレを心配してくれる小宮山の顔。
すぐに声が聞きたい思いを抱えながら、もう着信のしすぎで充電切れになった携帯をじっと見つめる。
自宅に着くのはもう夜の11時になる時間。
もう寝てる家族のことを考えて、こっそり足跡を立てないように部屋まで戻ると、急いで充電機を携帯に差し込んだ。
どんだけLINEきてんだろ……?、恐る恐る携帯の電源をオンにする。
その途端、♪、と鳴り響く通知音、目に飛び込んできたとんでもない数の未読数に苦笑いする。
あー……もう、全部読んでなんからんないし、どうせ読んだって昼休みのことだろうし……、そう片っ端から開いてはすぐに閉じていく。
順番に開いていった先の、いつもの仲間たちとのグループトーク。
そういや乾にお礼を言わなきゃなんないよな、そう思ってお礼文を打ち込むと、すぐに届いた返信に目を丸くする。
へ……?、乾汁、飲まなくていいってどういうことー?
あの乾が一度飲ませるといった汁をやっぱり飲まなくていいって言うなんて、それは前代未聞の話で……
意味がわからず、なんでさ?って問いかけると、オレが走り去ったあとの、小宮山と不二とのやりとりを教えてくれた。
あの後、そんなことになってたんだ……、小宮山、相変わらずオレのために無茶して……
不二に美味しいところを持ってかれた気もしないでもないけれど、んでも、小宮山があんな不味い汁を飲む羽目にならなくて本当に良かった……
きっと小宮山のことだから、現物がある限り、絶対飲むって言い張っただろうから……
不二にもあんがとね、そうお礼を送信すると、お礼なら小宮山さんに言いなよ、なんてすぐに返信が来た。
本当、その通りだよな……
急いでスクロールさせて探し出したネコ丸の間抜けな寝顔、その小宮山のプロフ写真をタップした。