第67章 【ユウアイ】
「そりゃ、人間不信にもなるよね……璃音みてれば、苦労してきたのは分かってたけどさ……」
英二のこと、秘密にしたくもなるわけだ、そう納得している美沙に、すみません……って思わず謝ってしまうと、そうやって悪いことしてないのにすぐに謝らないの!、なんてもう一度怖い顔をされる。
英二くんにも同じこと、よく言われます、そう言って苦笑いすると、えー、あいつと感性同じー?、なんて美沙は少し残念そうな顔をした。
「でもさ、英二、やるときはやるじゃん、このアルバムもだけど、昼間も璃音のこと、ちゃんと守ってた……」
落ち着いた美沙の声、パラリ、卒業アルバムをめくる音が部屋に響く。
はい……、そう頷いて枕を抱く手に力を込める。
昼間、私のために一生懸命頑張ってくれた英二くん……
英二くんの腕の中、必死に学ランが落ちないように気をつけながら、しっかりとその首にしがみついた。
時々、隙間から見た英二くんはすごく真剣な顔をしていて……
心臓は怖くてバクバクしていて、とうとうバレるんじゃないかってハラハラして……
でも、その真剣な英二くんの目と、学ランの匂いと、それから、絶対撒いてみせるから、そう言ってくれた力強い言葉は、すぐにでも捕まってしまいそうな危機的状況にも関わらず、不思議と安心できて……
あの後、英二くんからの連絡はまだなくて……
きっとあのままバイトに行ったんだろうから、それは仕方がないんだけれど……
そろそろ、いつも電話をくれる時間になる。
早く声が聞きたいな……
それに今日はいっぱい話したいことがあるよ……