第67章 【ユウアイ】
美沙の胸でたくさん泣いて、その涙が落ち着くと、もともと作業していた席に戻り、気持ちを落ち着けてもう一度英二くんとのことを話した。
もちろん、最初のきっかけだとか、セフレだった話は出来なくて、言葉を選びながらだし、辻褄が合わないところもあるんだけど……
でも私が口籠ると、言いにくいことは別にいいよ、そう言って美沙は無理に聞き出そうとしないから、そんな彼女の優しさにまた救われた。
「だいたい、最初からおかしいと思ってたんだよね……不二くんがこんなところに安易に付けるなんて考えられない」
そもそも学校でって自体信じらんないし、そう言って美沙は私の首元の髪を少し浮かせると、お昼休みについた真新しい英二くんのしるしを晒すから、恥ずかしくて慌ててその痕を手で隠す。
「うん、英二なら納得だな……なんも考えてなさそうだし……」
「え、英二くんだって、すごく色々考えてくれてるんですよ!」
思わず反論する声が大きくなる。
そりゃ、完璧で思慮深い不二くんと比べると、英二くんは一見、天真爛漫で自由奔放に見えるけれど、本当はすごく繊細で、でもすごく頼りになるんだから……!
そんな私の様子に美沙はプッと吹き出して、璃音、必死〜!、そうお腹を抱えて笑いだす。
だって、美沙が英二くんを悪く言うから……、そう赤い顔でブツブツ言いながら小さくなる私に、美沙は滲んだ涙を指で拭って、ゴメンゴメン、そう謝ってくれた。
「いらっしゃい、あなたが美沙ちゃんね?本当に璃音がお世話になって……」
「はい、市川美沙です、突然すみません、今夜はお世話になります!」
美沙と一緒に自宅のドアを開けると、先に帰ってきていたお母さんが急いで出迎えてくれる。
2人で私の家に来たのは、急遽、美沙を我が家に招待したから……
たくさん話したいことがあって、でも時間が足りなくて……
ねえ、平日だけどうちに泊まりにおいでよ?、そう言ってくれた美沙の気持ちも嬉しくて、でもちょっと考えて、だったらうちに来ませんか……?って思い切って誘ってみた。