第67章 【ユウアイ】
ふわり、辺りに美沙の香りが漂い、それから身体を包み込まれた。
目を見開いて、美沙……?、そう問いかける。
「やっと……ちゃんと話してくれたね」
いつもより穏やかな美沙の笑顔、落ち着いた声。
やっとって……?、そう戸惑う私に、気付いてたよ、ちょっと前から、気付いていて璃音のこと試した、ゴメンね、なんて言って美沙は私の身体を抱きしめる手に力を込めた。
「試した……?」
「どうしても璃音の口から言って欲しかったの、だって友達なのに寂しいじゃない……?」
美沙がいつから私と英二くんのことに気がついていたんだろう……とか、そんな素振りちっとも見せてなかったのに……とか、頭の中は不思議なくらい色々と冷静に考えていて……
でも、もうそんなこと、どうでもいいくらい美沙の言葉と腕の中が心地良くて……
美沙の細い身体に腕を回して抱きしめ返すと、その心地良さに酔いしれる。
「美沙、私、臆病でどうしても言えなくて、ゴメンなさい……大好き……」
良かった、嫌われなくて……ちゃんと自分の言葉で伝えられて……本当に良かった……
安心と喜びから涙が溢れると、うん、私も璃音、大好きだよ、そう言って美沙の手が私の後頭部をヨシヨシと撫でてくれる。
そんな風に優しくして貰えると、ますます涙は止まらなくて……
「あー、うちら、女同士で何やってんのよ……」
そうあきれ気味に笑いながらも、美沙は私の涙が落ち着くまで、ずっとその腕の中で髪を撫で続けてくれた。
「もう涙、落ち着いた?」
「はい、なんかすみません、私、涙腺弱くて……」
「いいって、不二くんとの写真もこんな感じのとこ、撮られたってわけね……?」
そうなんです、そう不二くんとの噂の写真を思い出しながら頷くと、確かに今のシーンみられたら、私と璃音の百合疑惑浮上するわ……、なんて美沙が苦笑いした。