第67章 【ユウアイ】
こんなんじゃ、前と同じ……
いつだって自分の言いたい事があっても言葉なんか出てこなくて……
結局、全部飲み込んで自分の中で消化して、諦めるのが当たり前になって……
でもそれじゃダメだって……
あんなに変わるんだって決めたのに……
変わるんだって、決めたのに……!!
「浮気とか、裏切りとか、そんなんじゃ、ない……」
静かに響いた私の震える声。
消えそうなくらいの小さな……でも精一杯の私の意思表示……
教室のドアを開け、出て行こうとしていた美沙の足がピタッと止まる。
緊張からバクバクと震える胸をギュッと抑えると、大きく息を吸って深呼吸する。
二学期の初日、あの日は英二くんが視線で背中を押してくれた……
でも今はたった1人で……それでも頑張らなきゃいけなくて……
震える足でゆっくりと席を立って美沙のそばに歩み寄る。
誰にも聞かれたくないから……、そう言って美沙が開けたドアをカラカラと音を立てて閉めた。
どういう事?、美沙が真っ直ぐに私の顔を見つめて問いかける。
その静かで落ち着いた声に、一瞬、ひるみそうになるも、大丈夫……大丈夫……そう自分に言い聞かせて気持ちを立て直す。
「私、不二くんとは、付き合って、ない……」
私が付き合っているのは、英二くん、なの……、そう言ってしっかりと美沙の目を見つめ返した。
「不二くんとは噂だけ……色々、本当に色々あって……詳しくは言えないけれど……でも、付き合っているのは英二くん、です……」
スムーズに出てこない言葉でなんとか声を振り絞る。
ゆっくりと、だけど言いたいことをちゃんと声にすると、一気に顔が熱くなる。
だって、ずっと秘密にしてきたから、こんな風に打ち明けるのって、やっぱりハズカシイ……
でも、ちゃんと向き合いたい、美沙を、失いたくない……
「信じられないかもしれないけれど……でも、信じて、ほしいの……」
ギュッとスカートの裾を握りしめて大きく息を吸うと、しっかりと自分の気持ちを声にした。