第66章 【トウソウゲキ】
「英二先輩!英二先輩!英二せんぱーい!!」
英二くんが帰ってすぐに、そう廊下の向こうから聞き慣れた声が近づいて来る。
あの声……どう考えても、桃城くんだよね……?
ああ、桃城くん、鳴海さんのことが好きだから、あの噂を聞いて英二くんに確かめにきたんだ……
そう納得した途端、失礼しますっ!と勢いよく飛び込んできた桃城くんは、英二先輩、どこっすか!?、そうキョロキョロと教室内を見回した。
「英二なら終礼と同時に帰っちまったぜ?」
血相を変えて飛び込んできた桃城くんに、入り口付近の席の男子がそう答える。
マジっすかー!なんて頭を抱えて天井を仰いだ桃城くんが、もう一度教室内に視線を戻したその瞬間、思いっきり彼と目があって……
どうしよう……?、そう戸惑う私を指差しながら、桃城くんは、あーーー!っと大きい声を上げた。
「小宮山先輩っ!なんで英二先輩と鳴海が一緒にいたんすか!?」
桃城くんはすっかり頭に血がのぼっているようで、みんなの前にもかかわらず慌てて詰め寄ってくると、私の両肩を掴んでガクガクと揺さぶった。
も、桃城くん、ちょっと、落ち着いて?、そうなんとか声にするんだけど、私の小さな声では興奮している彼の耳に届かないようで……
「鳴海、認めたんすよっ、英二先輩と昼休み一緒にいたって!あれは自分だって!」
桃城くんのその言葉に、え?って目を見開いた。
鳴海さん……どうして……?、混乱して頭がパニックになる。
やっぱ一緒だったんじゃん、そう一段と大きくなったクラス内のざわめきに、ダメ、しっかりしなきゃ!、そう必死に自分に言い聞かせる。
「なんで鳴海とっ!やっぱ英二先輩、まだダメなんじゃないっすか!?いくら小宮山先輩とつ」
「も、桃城くんっ!!」
私と付き合ったって、多分、そう桃城くんが大声で叫ぼうとした直前、慌ててその名を呼んでそれを制止した。
私の大声に桃城くんはハッとして、す、すんません……、そう気まずそうに視線をそらせた。