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【テニプリ】闇菊【R18】

第66章 【トウソウゲキ】




その日は一日中、英二くんと鳴海さんの噂でもちきりだった。
不二くんが何度か黒い笑顔で注意をしてくれたおかげで、あからさまに騒がれることはなくても、みんなのヒソヒソと噂する声は思いの外響くもので、その中心にいる英二くんは居心地悪そうに唇を尖らせて、午後の授業も休み時間もずっと机に突っ伏して過ごしていた。


「ごめんなさい、私ばっかり……」


こっそり送ったLINE、いつもはすぐに確認して返信が来るのに、この時は携帯に触れようとすらしなかった。
きっと大量にLINEが届いていて、電源を落としているか、確認する気力すらないんだろうな……なんて思うと、なおさら胸が痛んで苦しくなった。


胸のザワザワはずっと続いていて、奥底でくすぶる言い知れぬ不安と痛みが合わさって、グルグルと内面から私を蝕んできた。
ダメ、英二くんがあそこまでして守ってくれたんだし、不二くんも乾くんも助けてくれたんだもん……
ピンと背筋を伸ばし、なんでもないふりをして、その痛みと不安をないものにした。







「じゃ、今日はこれで終わりだー、気をつけて帰れよー」


SHRが終わり美沙の号令が終わると同時に、英二くんはカバンを手に教室を飛び出していった。
思わず目で追ってしまうと、出口で振り返った英二くんと目があって、その目は「ごめんな」って私に謝ってるように見えた。


「あー、英二が逃げたぞっ!」


教室内から響いた誰かの声に、英二くんはハッとして、それから慌てて私から視線を逸らして走りさる。
ううん、私の方こそごめんなさい……、そう心の中で謝って、それからギュッと膝の上でスカートを握りしめた。


結局、乾くんに助けられて理科室で別れてから、英二くんとは一言も話せなくて……
ごめんなさいも、ありがとうも、伝えられないもどかしさに堪えてきた涙が溢れそうになる。
早くこの騒ぎが収まればいいのに……、そう願うしかできない自分がすごく情けなくて悔しかった。

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