第66章 【トウソウゲキ】
「だーかーらー、最初からガイコツだったってば!」
「嘘つけー、あの芽衣子ちゃんなんだろ?」
「違うって何回も言ってんじゃん!芽衣子ちゃんとはそんなんじゃないってば!」
教室に戻ると当然だけど廊下よりも大騒ぎになっていて、英二くんの席の周りには人だかりができていて、更には学ランの下の女の子は鳴海さんということになっていた。
……ああ、そうか、当たり前だよね……
英二くんと鳴海さんが噂になっているのは当然知っていた。
だけどそれは事実と違うし、英二くんはその度しっかり否定してくれていたから、特に気にしていなかった。
だけど、鳴海さんはこの状況をどう思っているんだろう……?
英二くんと鳴海さんとの間にあったことは、空港で彼に助けてもらったあの日、久しぶりの行為の途中で発見したキスマークに動揺した時に教えてもらっただけ……
だから、詳しいことはよくわからない。
分かっているのは鳴海さんは英二くんを好きで、振られたけどそれでも好きで、最後の思い出にって一度だけ関係を持ったってことくらい……
そしてそれは夏休みのことだから、もう2ヶ月くらいは経っていて……
鳴海さん、今更、迷惑してるんじゃないかな……?
それとも、もし彼女が今でも英二くんを好きだとしたら……
今、どんな思いでこの噂の中にいるんだろう……?
ザワザワする……
よくわからない胸のざわめきをギュッと抑えて席に座る。
英二、忘れ物だよ、そう不二くんが人混みをかき分け、英二くんの机にお弁当箱をコトリと置いた。
「あ、ああ……、不二、あんがとね……」
人混みの向こうで聞こえた気まずそうな英二くんの声。
なぁ、不二は知ってんだろ?やっぱ芽衣子ちゃんだよな?、そんな周りからの興味津々の問いかけに、不二くんが変わらない笑顔を向ける。
「知らないよ、そんなくだらないこと」
興味もないし、もう二度と聞きたくもないね、そう続けた不二くんの言葉に、教室内の空気が一瞬で凍りついた。