第66章 【トウソウゲキ】
不二くんと一緒に理科室を出ると、一旦、体育館裏にカバンを取りに戻る。
英二の弁当箱は僕から返すよ、そう不二くんが黒い笑みを浮かべるから、あ、あの、2人の責任ですし、それに英二くん、凄く頑張って守ってくれましたから……、そう慌ててフォローすると、相変わらず小宮山さんは英二に甘いね、なんて呆れ気味に笑われた。
「でもまた迷惑をかけてしまって……」
ダメですね、私たち、そう反省と後悔のため息を漏らすと、だから迷惑だなんて思ってないよ、そう言って不二くんは笑いかけてくれた。
その笑顔はまたほんの少し寂しそうに見えて、胸の奥がしくんとなった。
「聞いた?英二、学校でってさぁ……」
「でも、彼女守って必死に走ってて、かっこ良かったよー!」
「うんうん、羨ましいー♪」
校内に入ると、当然だけど英二くんの話題で騒然としていて、居心地の悪い思いでその噂の中を教室へと向かう。
「やっぱ、倉庫は定番だよな〜」
「マットの上グッショリって、英二はアッチもアクロバティックってか!」
「俺、跳び箱に手つかせてバックしてー!」
「いや、それを言うなら跳び箱を背もたれにして対面座位だろー!」
女の子たちは学校での行為とお姫様ダッコに賛否両論といったところで、男の子たちの大半は面白がってイヤラシイ笑みを浮かべていた。
「ちょっと、男子!キモいんだけど!」
「うるせー、お前らの好きな不二だっていつも学校でヤって……」
「お、おいっ!」
廊下の隅で言い争いをしていた数名の男女が、私と不二くんに気がついて、慌てて気まずそうに視線をそらす。
関係のない不二くんまでそんな風に言われてしまって、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
ごめんなさい……、そう小さい声で謝った。