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【テニプリ】闇菊【R18】

第66章 【トウソウゲキ】




「うわっ!……って、英二じゃん、こんなところで何やって……」


英二くんの後に続いて倉庫を出ようとしたら、そう聞き覚えのある声にビクッと身体を震わせた。
この声……小林くんたちだ……!
とっさに英二くんの背中のワイシャツをグッと握りしめると、その背中にとんっと額をつけて顔を隠した。


どうしよう……?なんて言い訳したらいいの……?
そう思うんだけど、突然の出来事にパニックになっているこの状況では、私に上手な言い訳なんか出来っこなくて、英二くんだって何も言えてなくて……
結局、震えるしかできない私を、英二くんが学ランで隠して、それから抱えて逃げてくれた。


だけどいくら足の速い英二くんだって、私なんて抱えていればそう簡単に逃げきれるはずなくて、それどころか当然だけどすぐに疲れてきちゃって、汗だくで凄く辛そうで……


そんな英二くんに申し訳なくて、もういいですからって言っても、全然聞き入れてくれなくて、ああ、こんなんだったら、ダイエットでもしてれば良かった……、そう英二くんにしがみつきながら後悔した。


必死に逃げる私たちを助けてくれたのは、英二くんの友達の乾くんで……
突飛な助け方だったけど、確かに私の姿は追いかけてくるみんなから逸らすことができて……


乾くんに押し込められた教室は理科室で、なるほど、だから骨格標本が……なんて妙に納得してしまった。
英二くんがまた走り去った直後、いたぞっ!そう追ってきた人たちの声が聞こえ、慌てて窓枠の下に小さくなって身を隠すと、しばらくバクバクする心臓を抑えて息を殺した。


もう大丈夫のようだ、暫くするとそう窓の向こうから乾くんが声をかけてくれたから、慌てて顔を上げて立ち上がる。
あ、あの、ありがとうございました、そう深々と頭を下げると、乾くんは、いや、こちらこそ面白いデータが取れたよ、そう言って怪しげ……もとい、特徴的な笑顔を見せた。

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