第65章 【トオイヤクソク】
「あ、あの、その、ここでですか……?」
「大丈夫だって、ここ、いつだって誰もこないじゃん……?」
「でも、外って、もうなんか恥ずかしくて……」
なんでだよ、さんざんお日様の下でシテきたじゃん?、そう思いながらも、小宮山が嫌がることはしたくないし……なんて、んーっと考える。
「……外、じゃなきゃいーんだ?」
「え……?」
ガバッと起き上がると、急いで立ち上がり、それから広げてある荷物を片っ端から小宮山のカバンに詰め込んだ。
遅れて起き上がり、英二くん……?、そう不思議そうにオレを見ている小宮山には構わずに、そのカバンをある茂みの奥へとこっそり隠した。
「ほら、行くよん!」
「え、行くって……どこへ……?」
外じゃないとこ、そう言って小宮山の肩にもう一度オレの学ランをかけると、戸惑っているその手を引いて、そーっと体育館を覗き込む。
誰もいないことを確認すると、そのまま倉庫の外扉から中へと忍び込んだ。
「ここなら、外じゃないよん?」
「……そういう問題じゃ、ないんですけど」
苦笑いとも呆れ顔とも取れる小宮山の頬を両手で包み込むと、小宮山はシたくない?、そう首を傾げて問いかける。
オレだって、こんなの屁理屈だってわかってるよん……?
だけどもうずっと小宮山を感じていないから……
小宮山は生徒会、オレはバイト、お互い忙しくて、ここ最近、ゆっくり会えていないから……
包み込んだ頬が一気に熱を帯びる。
潤ませた目を泳がせて、そ、それは……、なんて言葉を詰まらせる。
「……熱くなったとこ、頬っぺただけ?」
両頬を包み込んでいる手の平からは、更に上昇した小宮山の体温が伝わってくる。
あ、あの……、そう言葉を選んでいるその脚にギュッと力が入る。
「……私も……英二くんと……同じ……」
その瞬間、小宮山の形の良い唇に、噛みつくようなキスをする。
オレの首に腕を回した小宮山の肩から、オレの学ランがハラリと落ちた。