第65章 【トオイヤクソク】
「そ、それって……あの……?」
「ん、プロポーズ……ずっと側にいるって、言ってくれたじゃん……?」
「そ、れは、そうですけど……」
すっかり諦めていたオレの夢……
菊丸家のような暖かい家庭をつくるんだって……
ずっと膝を抱えて震えていた幼い頃の自分……
菊丸家に引き取られて、その暖かさに救われた……
自分を見失い、深い暗闇の底でもがき苦しんでいたオレを、今度は小宮山が引っ張り上げてくれた……
小宮山がいない人生なんて、絶対、考えられないから……
「あ、でも小宮山って一人娘だし、もしかしてお婿さんもらう人?、オレ『菊丸英二』って名前、大切にしたいんだけど……」
「そ、そんなの、まだ家族で話し合ったことないですよ……多分、気にするなって言ってくれるとは思いますけど……」
んじゃ、菊丸璃音ってことでオッケー?、そう言ってウインクするオレに、どこまで本気なんですか……?、なんて小宮山はますます困った顔をする。
全部本気だって……、そう言って抱きしめる腕に力を込めると、あとから冗談でしたって言ったら泣いちゃいますよ……?、って小宮山は恥ずかしそうに呟いた。
言わないよん……
だってこんなに、好きで好きで仕方がない……
この気持ちが、変わることなんか、絶対、ありえない……
今はまだ、遠いいつかの約束だけど……
「大人になって時期が来たら……ちゃんとプロポーズするよん……」
そっと学ランを脱いで小宮山を包み込むと、あの……って顔を上げた小宮山は恥ずかしそうに視線を泳がせる。
ゆっくり押し倒して覆いかぶさると、今からですか……?そう言って小宮山は顔を赤くする。
「小宮山が痛くないように気をつけるからさ……?」
二学期になってからは、2人でお昼を食べたって、そこでヤろうとは思わなかった。
だって学校での行為は、オレが一方的に押し付けた欲望の捌け口でしかなかったから……
だけどこんなに気持ちが満たされている今だから、身体だって満足したいって思うのは、思春期の悲しいサガってやつ……?