第65章 【トオイヤクソク】
そ、そんな可愛いこと、上目遣いでって、それ、反則すぎるだろー!!
小宮山を勢いよく引き寄せると、力一杯抱きしめる。
一瞬驚いた顔をした小宮山は、それから嬉しそうにオレの背中に腕を回す。
料理もオレのため?って問いかけると、少し恥ずかしそうに小さく頷いた。
「英二くんくらいは無理でも、もう少しなんとかしたいんです……このボタンも、私がちゃんとつけ直したくて……でも全然ダメで……」
恥ずかしそうにため息をつく小宮山の髪を撫でながら、もう一方の手のひらでそっと頬を包み込む。
気長に待ってるよん……?、そう言ってニイッと笑うと、卒業までにはなんとか……、なんて小宮山が少し困った笑顔をみせる。
そのままゆっくりと顔を近づけてキスをすると、小宮山は幸せそうな笑顔で頬ずりをした。
オレのためにいつも一生懸命になってくれる小宮山……
今朝、オレの無理に作った笑顔にすぐに気がついてくれた……
本当はすげー気になってるくせに、オレが話すまで何も聞かないそんな小宮山の優しさが嬉しい……
オレの肩に寄せるそ小宮山の幸せそうな頬をそっと指で数回撫でる。
くすぐったそうに首をすくめて、小宮山がまた頬ずりする。
小宮山のこの笑顔をずっと守りたい……
オレの隣でいつまでも笑い続けて欲しい……
「小宮山、でも無理しないでよん?色々忙しいんだからさ……」
「でも……やっぱり女としては……」
「別にいいよん……料理も裁縫もオレがするからさ……その代わり、小宮山は機械関係担当してよ?」
パソコンとか、テレビなんかの配線とかさ、オレ、機械音痴だから、そう続けるオレに意味がわからない様子で小宮山は首をかしげる。
「小宮山、言ったじゃん……?『料理上手で家庭的な人と結婚する』って……」
キョトンとして目をパチパチさせる小宮山、数秒後にボンッと顔を真っ赤にさせる。
あ、う、え……?、そう言葉にならない声を口から漏らし、それから思いっきり視線を泳がせた。