第64章 【ネガイゴト】
『それでは、帰ったらLINEいれますね?』
「ほいほーい、待ってるよん♪」
通話を終わらせた携帯をダイニングテーブルに置くと、少し息苦しさを覚えた胸をおさえて、すーっとゆっくり深呼吸する。
大丈夫だって、小宮山も不二も、オレのこと、絶対、裏切んないもん……
パチパチと油の跳ねる音にハッとする。
や、やべっ!、慌てて火を弱めて海老を取り出す。
あー、ちょっと揚げ過ぎちった……
これは下のねーちゃんの分でいっか、なんて思いながら、今頃、小宮山と不二、学校出たかな……?、そうまた考えてため息を落とす。
「……バイトでもすっかな」
ダイニングテーブルの隅、先日、ねーちゃんが見てた付箋付きの求人情報誌をジッと眺める。
小宮山が生徒会で忙しくなればどうせオレは毎日暇だし、バイトでもして忙しく過ごしていれば、小宮山と不二のことで悶々とする暇もないだろうしさ……
それに、前みたいに金欠でデートもできないなんて情けないもんね……
これ以上、小遣いあげて欲しい、なんて図々しいこと頼めないし……
そんな風に思いながら、家族分の天ぷらを揚げ続けた。