第64章 【ネガイゴト】
『……本当は、嫌なんじゃ、ないんですか……?』
数秒の沈黙の後、なかなか出てこない言葉を振り絞った小宮山が、そう小さい声で問いかける。
そりゃ、本音は嫌だけどさ……
でも生徒会は今日だけじゃない、これからどんどん日は短くなっていくし、どうせそのうち毎日のように2人が一緒に帰るようになんだもん……
「ぜーんぜん、だから言ったじゃん?普通にしてる分は構わないって」
そんなの普通の範囲だよん?、そう明るい声で答えると、小宮山は少し戸惑いながら、そうでしょうか……?、なんてまだ納得してなさそうに返事をする。
ほーんと、一回言い出したら聞かないよな……、思わずとびだす苦笑い。
でもそんな風にオレのことを一番に考えてくれる小宮山の気持ちが嬉しい……
小宮山……、そうかける声が自然と落ち着いたものになる。
「たとえ嫌だとしたってさ、オレ、大切な彼女が危ない目にあうかもしんない方がもっとやだぞ?」
それは嘘のない本当の気持ち、心からの本音。
小宮山が怖い思いをするほうが、よっぽど嫌だ……
オレだって小宮山のこと、なによりも一番に考えてる……
「オレの方から、不二にお願いするところだよん……?」
だからさ、小宮山はなーんも気にせず不二と帰ってきなって、そうゆっくりと諭すように言うと、あの……その……、なんて何度か恥ずかしそうに口籠った小宮山は、わ、分かりました、そう小さい声で返事をした。
「あー、良かった、小宮山、自分が思ってるより、ずっと隙だらけなんだからさ」
『そ、そうですか……?、私、自分では結構しっかりしているつもりなんですけど……』
「どこがだよ〜!もう襲ってくださいって背中に貼り紙して歩いてるようなもんだって!」
そこまで言いますか?、少し不貞腐れた小宮山の声。
だって、オレが言うんだもん、説得力あんじゃん?、そう言ってニイッと笑うと、それ、自分で言いますか?、そう小宮山は呆れたように言って、それからクスクス笑った。