第64章 【ネガイゴト】
まさに不二の言うことは正論で、大体、不二が小宮山を1人にするはずないんだから、オレが今から迎えに行くって言ったら、そのまま人気ない学校に2人きりになるわけで、そっちの方が余計面白くなくて……
分かったよ、小宮山、ぼーっとしてるから危険だし、そう不二に任せることを承諾する。
それから、分かればいいよ、それじゃ、そう言って通話を終わらせようとした不二に、あって思って、ちょい待ち!、そう慌てて呼び止めた。
「いくら2人っきりだからって、小宮山に変なことしないでよね」
『……英二じゃあるまいし、そんなことするはずないだろ』
やべ、不二の語尾に明らかな怒りマークを感じて首をすくめる。
じ、冗談だって、そう慌ててさっきの言葉を取り消すと、どうだか……、そう不二が呆れたようにため息をついた。
そんな不二に、あ、あのさ……そう少し言葉を選びながら話しかける。
「小宮山に……変わってくんない?多分、オレから直接言わないと、納得しないだろうからさ……」
言葉を選んだつもりだったけど、思いのほかストレートになっちゃって、すぐに不二の返事もかえってこなくて、しまったー、そう頭を抱えて立ち尽くす。
うん、そうだね、小宮山さんは……、そういつもより低い声で不二は呟いた。
『小宮山さん、英二が変わってって』
『え?、あ、はい……も、もしもし?』
小宮山の少し上擦った声、不二の前だからか、それとも話の展開のせいか、いつもより余計に緊張しているのが伝わってきて、もしもし、小宮山ー?オレー、なんて、小宮山が気を遣わないように普段通りに声をかけた。
「小宮山、せっかく不二が送ってくれるって言ってんのに断ったんだって?」
『あ、はい……だって……』
「もうこんな時間なんだからさ、なんも気にせず送って貰えばいいんだって」
『でも……』
「でもはなし!だってもあさってもなし!」
そうビシッと言い切ると、もう小宮山は何も言わなくて……
きっと言わないんじゃなくて、言葉が出てこなくて……