第64章 【ネガイゴト】
突然の不二くんの登場に、しまったという顔で気まずそうにしている女の子たち。
あ、あの、大丈夫ですよ……?、気にしないように声をかけると、やっぱり僕の話題かな?そう不二くんが笑いかける。
「なんかねー、この子達、璃音と不二くんのこと、聞きたいみたいよ」
「「美沙っ!」」
「なによ、本当のことでしょ」
「あー、もう、不二くん、美沙なんてさっき璃音の胸揉んでたんだよ!」
「だから、掴んだだけだってばっ!」
もう、その話はもうやめてくださいっ!、また恥ずかしくて両手で顔を覆い首を横に振る。
そんな話に不二くんは相変わらず穏やかな笑顔で微笑んでいるから、ますます恥ずかしくなった。
「あ、あの、不二くん、それで何かありましたか?用があるんですよね?」
恥ずかしさのあまり、無理やり会話を終わらせて、みんなに背を向けると不二くんと向かい合う。
そんな私の様子にクスクス笑いながら、放課後、ちょっと頼みたい仕事が入って、残れるかな……?、そう彼が首をかしげる。
「生徒会執行部ですよね?もちろん大丈夫ですよ」
「良かった、それじゃ、放課後また」
本当に不二くんって何をしていてもキレイだな……
爽やかな笑顔で去っていく不二くんを眺めながら、みんながいろいろ知りたがるのも当然だよね、なんて改めて思う。
そのまま不二くんは英二くんと言葉を交わしていて、そんな英二くんの笑顔にドキドキした。
璃音が恋する乙女の顔をしてる、そんな私に女の子たちがニヤニヤ笑うから、ち、違うんです、そう慌ててそれを否定するも、はいはい、いいよね彼氏持ちは、なんて相手にされなくて……
それはそうなんだけど、本当は相手が違うんだよね……
みんなの方に身体の向きを戻す直前、もう一度だけ英二くんの笑顔をこっそり眺めた。
「そういえば美沙、この前、告ってきた他校の男子とデートしたんでしょ、どうだったの?」
「一緒にご飯食べに行ったら連絡つかなくなった」
あー……、そう女の子たちと顔を見合わせて苦笑いする。
普通に食べただけだよ、そう言う美沙に、それ、普通じゃないから!なんて1人が突っ込んで、それからみんなでいっぱい笑った。