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【テニプリ】闇菊【R18】

第64章 【ネガイゴト】




「璃音ー、おはようー!」


市川さんはいつも英二くんの少し後に登校してきて、真っ先に私に挨拶しにきてくれる。
あれから彼女は私を名前で呼んでくれるようになり、こうやって声をかけてくれるから、英二くんの隣の席なのも合わさって、私の学校生活は劇的に変わりはじめた。


「おはようございます、市川さん」

「あー、ほら、またー、美沙だって言ったでしょー!」

「あ、はい、えっと……美沙ちゃん」


誰かを名前で呼ぶのは英二くん以外ではナオちゃんたち以来で、慣れない名前呼びに戸惑いながらも、やっぱりますます仲良くなれたみたいで嬉しくて……


美沙ちゃん、そう名前を呼んだ瞬間、彼女がブルっと大きく身震いをする。
英二くんや周りに集まっていたクラスメイトたちも、美沙ちゃんってそれ、気持ち悪いだろ〜、そう口々に大笑いする。


「いや、璃音、美沙ちゃんはやめてよ、美沙ちゃんは……」

「あ、あの、でも私、人を呼び捨てになんてしたことがないので……」

「それでもダメ、蕁麻疹でそうだから!」


そう言いながら腕や背中をポリポリと掻く真似をする美沙ちゃ・・・美沙に、周りのクラスメイトたちが、美沙ちゃ〜んなんてからかって、あんたらグーとパー、どっちで殴られたい?、そう美沙が指をポキポキさせる。


「あ、あの、美沙、……いくらなんでも暴力はダメですよ、あの……」

「いや、小宮山さん、それ市川の冗談だよん?」


オロオロする私にすかさず英二くんがツッコミを入れて、また一段と大きな笑いが沸き起こる。
みんなの前で堂々と英二くんに話しかけられて恥ずかしくて、みんなに笑われて恥ずかしくて、もうとにかく色々恥ずかしくて……


平静を取り戻そうと慌ててメガネを取り出すと、あ、ほら、小宮山さん、恥ずかしいの誤魔化してるよ、なんて誰かに突っ込まれて……


すっかり見抜かれてる……
もう本当に意味ないな、そう思いながらケースにメガネを戻すと、あとは黙って俯いた。

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