第62章 【シンガッキノケツイ】
「それでは、二学期のクラス委員を決めていきます。男女一名ずつ、どなたか立候補しませんか?」
ピンと伸ばした背筋、キリッと引き締まった表情、教室の隅まで響く落ちついた声……
オレと2人で居るときとは正反対のその凛とした態度を、以前とは全然違う気持ちで眺める。
だから、ちょっと不安になる。
こんなとき、小宮山が前にでて取り仕切るとき、いつもこのクラスメイトたちからうける風当たりは強い……
「女子はいつものように小宮山さんで良くない?」
「そうだよねー、小宮山さんしかいないよね!」
「ずりーよなー、女子は、小宮山が喜んでやってくれるんだからよー」
案の定、すぐに上がった小宮山を推す声。
すみません、今期から生徒会執行部に入りましたので……、そう小宮山が一呼吸おいてそれを断る。
「えー、マジで言ってんの?どうしてくれるのよ、小宮山さんがいれば無縁だと思ってたのに!」
「小宮山さんなら出来るでしょー?1学期だって掛け持ちしてたじゃない!」
ったく、相変わらず無茶苦茶いうよな……
小宮山の優秀さにおんぶに抱っこのクラスメイトたち。
いや、頼りにしている訳じゃない……
こんなの、ただ単に面倒事を押し付けているだけ……
まぁオレだって、前は、知ーらないって、関係ない振りしてたから、同じなんだけどさ……
グッと下唇を噛んで拳を握りしめる。
分かりました、そうフーッと小宮山が大きくため息をつく。
ああ、小宮山、やるって言う気だ!
無理なのに、生徒会執行部をやりながら、クラス委員なんて出来るはず無いのに……
なんで誰も何も言わないんだよっ!
そんなのダメだって、我慢できずにそう叫ぼうとしたその瞬間……
「みんな、いい加減にしようよ?」
低く、怒りを帯びた声が響き、教室内がシンっと静まり返る。
この声って……、声が聞こえた方向、窓際、前から3番目の席に一斉に視線が集まる。
いい加減にしようよ、そうもう一度呟きながら、ゆっくりと市川が立ち上がった。