第62章 【シンガッキノケツイ】
「んじゃ、色々やることあるけど、とりあえず席替えすっかー」
そんな担任の提案で始まった席替え、小宮山から順番にクジを引いてどんどんと移動していく。
オレのクジの番は一番最後で、残り物には福があるーなんて思いながら引いた残りクジは本当に福があって、もう移動を済ませて本を読んでいる小宮山を確認すると、うっし!、そうこっそりガッツポーズをした。
「小宮山さん、隣、よろしく~♪」
きっと小宮山は嫌がるだろうなー、なんて思いながら挨拶したら、案の定、真っ赤になって慌てて黒板を確認をしていた。
その後は複雑そうな顔でメガネで顔を隠していて、ほーんと分かりやすいよなっておかしくて……
周りの奴らと話をしながら、こっそり交換したLINE。
机の下の携帯を見る小宮山は相変わらず真っ赤な顔で必死に平静を保っていた。
「ほら、そろそろ静かにしろー、次は学級委員を決めるぞー」
あー……面倒だな、小宮山、ちゃっちゃと決めてくれー、そう続けた担任の声に、隣の小宮山が慌てて顔を上げて、はい、と立ち上がる。
決まったら呼びに来いなー、教科準備室でコーヒー飲んでっから、なんて出て行く担任に、先生のくせにサボっていいのかよ、なんて苦笑いしながら、背筋を伸ばして教卓に立つ小宮山の凛としたその様子に頬をゆるませる。
さっきまで真っ赤な顔で小さくなってたくせにさ……
ほーんと、スイッチ切り替え、速いよな……
ツンツン禁止って言ったって、小宮山が醸し出す雰囲気は元々が清楚で気品があって……
久しぶりに掛けたメガネはもうその整った顔を隠す目的は果たしてなくて、どちらかと言うと知的美人を更に引き立たせるものになっていた。
……大石には、メガネかけたとこ、見せらんねーな。
そんな風に思いながら、メガネをかけた女の子が好みの親友の顔を思い出し、こっそり苦笑いをした。