第62章 【シンガッキノケツイ】
「おーっす、英二、久しぶりー!」
「英二ー!元気だったー?」
周りから掛けられる声に、おっはよーん!、そう笑顔で答えながら教室に向かう。
久しぶりの学校、いつもよりだいぶ早い登校時間は新鮮で、それでいてなんか懐かしい。
「ねえ、さっき昇降口で不二くんと小宮山さんいたよ」
「えー、新学期早々一緒に登校?相変わらずだねー」
「んー……、でもちょっと様子、変だったよ」
ぎこちないって言うか……、周りから聞こえてきたそんな声に、ピタッと足を止める。
小宮山、オレのせいで混乱してんじゃん……
直ぐに慌てて振り返り、急いで昇降口へと走り出す。
だから困らせたい訳じゃないんだって、そう小さい声でくり返す。
たどり着いた昇降口、ハッとして立ち止まる。
少し距離を置いて向かい合う小宮山と不二……
こちらからは不二の顔は見えなくて、小宮山も俯いていて表情は見えないけれど、確かに2人とも不自然に戸惑っていて……
そんな態度だったら、周りから色々噂されちゃうじゃん!
小宮山、今日は一世一代の決意で登校してきたってのにさ……
『学校でも笑えると思いますか……?』
以前、空港で助けたその夜、中学の頃にあったいじめの一部始終を話してくれた後、オレの腕の中でそう聞いてきた小宮山。
本当は市川さんにありがとうって言いたかった、謝ったら許してくれるかな……?、そう不安そうに震える声で呟いた。
大丈夫だって、少しでも安心させてやりたくて、ゆっくりとその髪を撫で続けた。
多分今日は、すげー、緊張しているだろうから、すっかり当たり前になった朝のLINEで、ダイジョーブイ!、そうおどけ気味のスタンプを送った。
それから少しでも力になれたらって思って、小宮山の決意を見守ろうと急いで学校へ登校した。
最初の目的とは違うけど、やっぱ、早く来て良かった……
ここで変な噂なんか流れたら、市川に謝るどころじゃなくなっちゃうかんね……
すーっと大きく息を吸って、おっはよーん、そういつものように不二に跳びついた。