第61章 【セイチョウ】
「んじゃさ、今年こそどう~?メイド服♪」
「……はい?」
またとんでもないことを言い出して目を輝かせる英二くんに、着ませんよ、そう苦笑いしながら答える。
だけど英二くんはそんな私の言葉なんて全く耳に届いてないようで……
「でも小宮山ならメイド服っていうよりナース……いや、女医?、はっ!ミニスカポリス……」
ブツブツとなにやら良からぬ妄想をしている英二くんを、だから着ませんってば!、そう大きい声をあげて現実に引き戻す。
「えー……じゃあネコ耳はー?」
「……ネコ?」
思わずネコ好き故に反応してしまい、にやーっと英二くんが企みの笑みを浮かべる。
な、なんなんですか、その笑みはっ!付けませんよ、絶対っ!、そう言って頬を膨らませた。
「……だいたい、英二くんじゃあるまいし、私じゃ似合いませんよ?ネコ耳……」
「そーう?、小宮山、可愛いから似合うと思うけど?」
「そもそも、私、可愛くなんかないですよ……」
「えー?こーんなに可愛いのに?」
英二くんが私の髪をかきあげて、耳元にフーッと息を吹きかける。
ひゃぁんっと思わず声を出してしまい、彼がニヤリと笑う。
「でもいいや、小宮山が可愛いのは、オレだけ分かってればいいもんね」
ギュッと抱きしめられてすっぽりと包まれる。
トクントクンとその心地よい胸の音に耳傾けながら目を閉じる。
やっぱり私もやだな、学校……、ポツリと呟くと、英二くんは凄くびっくりした顔をして、小宮山が!?、そう声を上げた。
「だって、一緒にいれる時間、減っちゃうじゃないですか……」
いくら同じクラスだといったって、学校が始まれば2人きりでいられる時間は少なくなる。
生徒会執行部だって始まるし、その忙しさは身を持って分かってる。
平日は殆ど一緒にいられないかもしれない……
土日はお母さんが休日出勤にでもならないと家にいるし……
ギュッと英二くんの胸のシャツを握りしめると、だからすげー可愛いってば、そう言って力強く抱きしめてくれた。