第61章 【セイチョウ】
次の日の約束もその次の日も、2人の都合が合えば毎日英二くんは遊びに来てくれた。
お金に余裕がなかったから、ただまったりと過ごしているだけだったけど……
私は勉強をしたり本を読んだり、英二くんは携帯でゲームをしたりして、お互い好きなことをしながら、ただ同じ空間で同じ時を共有して……
バラバラなことをしていても、なんとなく話をしているうちに、気がつくと2人の距離が近くなっていて、どちらからともなくキスをして、そして愛を確かめ合って……
どこかに出かけなくても、お金なんか掛けなくても、2人で居ること自体が特別で、ただそれだけで幸せで……
「英二くん、私、英二くんさえいれば、それだけで幸せなんです……」
思わず口をついた本音に頬が熱くなる……
恥ずかしくて慌てて俯くと、ん、そだね、そう英二くんも嬉しそうに笑ってくれる。
「でもやっぱ、学校はやだぁ~!!」
一瞬、2人を包み込んだ穏やかな雰囲気を、英二くんの涙の叫びがかき消した。
一生夏休みならいいのに、なんて大袈裟にため息をついて肩を落とす英二くんの横顔を眺めながら、英二くんは学校、嫌いですか?そう言ってクスクス笑う。
「学校は楽しいよん?授業さえなければねー……」
「でも二学期は行事も多いですよ?学園祭もありますし」
学園祭かー、去年はオレのクラス、綿菓子やったんだよねー、って言う英二くんに、それって英二くんが食べたかったからですか?なんて言って笑うと、バレた?そう言って彼もおどけて笑う。
「小宮山のクラスは何だったのさ?」
「メイド執事喫茶ですよ、定番の」
「へ?もしかして小宮山も着たの?メイド服……」
「そんなわけないじゃないですか、私は実行委員だったので裏方専門でした」
面倒な委員を押し付けられるのはいつものことで、でもそのおかげで嫌なことはやる必要がなくて……
あの時だけは、実行委員になって良かった、そう心から思ったことを思い出して苦笑いした。