第61章 【セイチョウ】
茜色の空、朱色に染まり始めた雲の輝き、巣へと呼び合いながら帰る鳥達の声。
黄昏時はどこか寂しくて、ギュッと繋がれた手に力を込める。
いつもの公園、東屋のベンチで過ごす、サヨナラまでの短いひと時……
「ヒグラシの声、だいぶ少なくなりましたね……」
夏休み最終日、昼間はまだまだ暑いこの時期も、この時間ともなるとどこか風の流れも変わり、少しずつ秋の気配を感じ始めて、ほんの少しだけ切なくなる。
風に舞い上がる髪の毛を耳に掛けながら、オレンジ色の空を遠くまで眺めた。
「はぁ~、夏休み、終わっちゃうのかぁ……」
けーっきょく、金欠で小宮山とデート出来なかったなんてさー、そう頬を膨らませる英二くんの横顔を申し訳ない気持ちで見上げる。
あの日、プラネタリウムの後、急に入ったホテル代、しかも結局時間が足らなくて、しっかりかかった延長料金……
自動精算機の前で財布を覗きながら、顔をひきつらせる英二くんに慌てて財布をとり出した。
「いーって、こういうお金は男が払うって決まってんの!」
「でも、英二くん……いつも、ゴ……その、避、妊具だって……」
2人のことですし……、そう申し訳ない気持ちでいっぱいになる私に、いーんだって、そう英二くんは声を強くして私の財布を押し返した。
「他の女ならともかく、小宮山にだけは絶対出してもらうわけにいかないかんね……」
これは素直に喜んでいいところだよね……?
ぽつりと呟いた後、しまった、そういう顔で恐る恐る私の様子を伺う英二くんに、ふふっと笑って笑顔を見せると、ホッと安心したように彼は胸をなで下ろした。
「本当は明日、小宮山とどっか出かけたかったんだけどさ……」
ゴメン、スッカラカン……、そうお財布を逆さにして苦笑いする英二くんに、でも私の家ならただですよ?そう言ってクスクス笑った。