第61章 【セイチョウ】
「いつもオレだけわがまま言うみたいでさ……」
そもそも、今日はそれが嫌だったんだ。
不二と出かけるって言うから、違う方向に話が進んで行っちゃったけど。
明らかに気を遣われて様子を伺う視線、いつまで経っても鳴らない携帯電話……
オレ、小宮山にもっとわがまま言ってもらいたいし、オレのこと、すげー困らせて貰いたい……
いつまでも気を遣われんのはイヤだし、もっと気楽に連絡して欲しい……
「わがままと言われましても……」
そんなオレの問いかけに、唇に人差し指を添えて少し考えた様子の小宮山は、私は今のままで本当に……、そう言いかけて、そらから、あ、一つだけいいですか?、とオレの方に振り返る。
「なになに、なんでも言ってよん!」
「それじゃ……、あの、駅前で女の子と交換したLINE、必要ですか……?」
「へ……?、LINEって……」
駅前で交換した……ですぐに思い浮かんだのはあの軽そうな逆ナン女。
真っ直ぐにオレの顔を見る小宮山のその視線から目を離せずいると、♪、図ったようにオレの携帯がLINEの着信を知らせる。
『ね、いつ遊べる?、私、寂しくて1人でしちゃったよ?』
ドライヤーを置いて確認した携帯には、きわどい画像とともに送られてきたメッセージ。
マジ……?、引きつった顔でそれを眺める。
ハッとして顔を上げると、真顔でオレを見ていた小宮山と目があった。
「いつ遊ぶんですか?」
「あ、遊ばない、遊ばない!!」
フルフルと首を横に振り、慌ててその女をブロック削除する。
別にいいんですけど……我慢、慣れてますから、そう小宮山が困ったような笑顔を見せる。
「……小宮山、気づいてたの?」
「はい、シンボルツリーの向こうで女の人と一緒に携帯を操作してる英二くんが見えたので……」
もしかして、LINEの交換かなって……そう苦笑いする小宮山に、だってあん時、オレがいてすげー驚いてたじゃん!、なんて慌てて問いかけると、女の人のことなので、その方がいいかな?って……、そう小宮山は複雑そうな顔をした。