第60章 【クラヤミノナカデ】
「……英二くん、お腹空いてるんですか?ハンバーガーとか食べます?」
僕と英二の会話の内容を本当の食事のことと信じて疑わない小宮山さんが、そう首を傾げながら英二に問いかける。
「い、いんや、オレ、そう言うのより、高級料理のほうが……」
「高級……?、あの、私、今日はそこまで持ち合わせが……、それにちょっとカジュアル過ぎる格好なので……」
そう申しわけなさそうに眉を下げる小宮山さんは、本当にどこまでも純粋で、まさかそれが自分と他の女の子たちの事だなんて全く思いもしてなくて……
そんな小宮山さんは僕の方に視線を向けると、不二くんはどうですか……?、そう困った顔で問いかける。
「……僕は好きな人としか考えられないよ……」
思わず口をついた本音。
そう、今は小宮山さん以外となんて考えられない……
ポツリと呟くと、小宮山さんは、えっと、好きな人の手料理ですか……?それこそ無理かと……、なんてますます困った顔をする。
そんな僕と小宮山さんの会話に、英二は気まずそうな顔をして、それから黙って目を伏せた。
ああ、英二もそんな顔する必要ないよ……?
小宮山さんは英二にとって特別な人なのを知っていて、それでも好きになってしまった僕が悪いんだから……
英二も別に腹が減ってる訳じゃないよね、行こうか、そう2人に笑顔を向けると、2人の姿を見なくて済むように先頭を切って歩き出した。
プラネタリウムにつくと、ピタリと足を止めて一呼吸おく。
それは恐らく手を繋いで歩いているだろう後ろの2人に、これから振り返ることを伝えるため。
見なくて済むならそれに越したことはない。
やっぱり英二が現れた段階で帰れば良かったんだ。
それをわざわざ見せつけられるために一緒にいるなんて……
いったい何がしたいのか、自分自身でもわからなくて、内心、ふーっとため息を落とした。