• テキストサイズ

【テニプリ】闇菊【R18】

第60章 【クラヤミノナカデ】




ぱあっと目の前が一気に明るくなった。
目を見開くとストロークの体制に入っている幸村が見えた。


「これで終わりだ、すぐに楽にしてあげるよ?」


はっきりと聞こえた声に、もう一度ラケットをギュッと握りしめた。
急いで起きあがりそのボールを打ち返すと、幸村の足元にバウンドして後方へと跳んでいった。


「……悪いけどまだ終われないよ」


信じられないという顔をしている幸村を睨みつけた。
負けられない、僕は、負けるわけにはいかないんだ。


スーッと大きく息を吸って深呼吸すると、もう一度小宮山さんの笑顔を思い出した。


「約束したんだ、必ず勝つって……」


例え苦しくたって……
どんなに思い続けることが辛くたって……


決して辞めることなど出来ない。


小宮山さんと、約束したんだ____





「ゲームセット!ウォンバイ不二!7-6!!」


沸き起こる歓声……
駆け寄ってくる桃にガッツポーズの海堂、メガネのブリッジを上げてホッとした様子の乾……


眩しいくらいに青い空を見上げると、沢山の鳩が白く輝きながら空の彼方へと消えていった。


勝ったよ……小宮山さん……


駆け寄ってきたみんなに揉みくちゃにされながら、小宮山さんに心の中で勝利の報告をした。





「……負けたよ」


礼をして差し出された幸村の手を握り握手を交わす。
興奮さめやらぬ観客席にむかう僕を、ちょっといいかな?そう彼が呼び止める。


「キミは……暗闇の中で何をみたの?」


静かに歩み寄ってきた幸村のその問いに、さあ、何だろうね……?、そうとぼけると、幸村は僕に近い笑みを浮かべた。


「試合に勝ったというのに少しも嬉しそうじゃないね……」


その涙はまるで敗者のようだ……、幸村の言葉で初めて気がついた。
あの暗闇の中からずっと、涙が頬を濡らし続けていることに……


ああ……本当だ……変だね?、そう呟くとまた頬を涙が伝う。
そんな自分が滑稽でクスクス笑うと、その笑い声がまた僕の胸を痛ませた。

/ 1433ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp