第59章 【ドクセンヨク】
確かに不二に見られたら悪いんだけど……
小宮山の性格を考えたら嫌がるのは当然なんだけど……
でもやっぱりその手を離したくなくて、もうちょっといーじゃん?なんてますます繋いだ手に力を込める。
良くないですよ……!、そう小宮山はオレの顔を少し恨めしそうに見上げていたけれど、結局、オレはプラネタリウムに着くまでその手を離さなかったし、少し前を歩く不二も一度もこちらを振り向かなかった。
プラネタリウムに着いて入り口の自動ドアをくぐると、不二がゆっくりと立ち止まる。
それはまるでオレらに振り向くことを知らせているようで、小宮山は慌てて繋がれた手をクイッと引っ込める。
流石にこれ以上は駄目だよな……?
名残惜しい気持ちを押し殺して手を離すと、その瞬間、不二がいつもの笑顔で振り返った。
「小宮山さん、パンフレット、読みたい?」
「え?あ、はい、そうですね」
受付に向かう不二に小宮山がパタパタと走り寄る。
離れていく小宮山の背中を見ながら、さっきまで繋がれていたぬくもりが寂しくて、ギュッとその宙ぶらりんの手を握りしめる。
ふと不二の隣で小宮山がそっと自分の指に唇を寄せるのに気が付いた。
ああ、小宮山も今、オレと同じ気持ちじゃん……?
そう思ったら凄く嬉しくって、同じようにオレも自分の指にキスを落とした。
開演までロビーのベンチに座り時間をつぶす。
さっきはオレの隣で嬉しそうに頬を染めていた小宮山は、もう不二と2人で仲良くパンフレットを覗き込んでいて、そんな2人に凄くモヤモヤしていた。
うん、分かってる、小宮山は不二と一緒だから嬉しいんじゃなくて、パンフレットを読むこと事態が楽しいんだ。
分かっている、分かっているけど……、やっぱり面白くないっての!
携帯ゲームの画面を見ながら、ぶうーっと頬を膨らませる。