第59章 【ドクセンヨク】
「……英二くん、お腹空いてるんですか?ハンバーガーとか食べます?」
突然、後ろから聞こえた小宮山の声に肩を振るわせる。
げ……って思って恐る恐る振り向いたオレの顔を、小宮山は不思議そうな顔で見上げていた。
まさかナンパ女と連絡先交換したの……聞いてた……?
内心そう慌てていたオレは、小宮山のその様子に、良かった、バレてない……、なんてこっそり胸をなで下ろす。
「い、いんや、オレ、そう言うのより、高級料理のほうが……」
「高級……?、あの、私、今日はそこまで持ち合わせが……、それにちょっとカジュアル過ぎる格好なので……」
思わず飛び出したオレのよけいな一言。
どこまでも素直に受け取る小宮山に胸が痛む。
不二くんはどうですか……?、そう困った顔で不二に問いかける小宮山の横顔を申し訳ない気持ちで眺める。
「……僕は好きな人としか考えられないよ……」
俯いて発した不二の一言がさらに胸を締め付けて、慌てて視線を落とした。
プラネタリウムへと歩き出した不二の背中を眺めながら、ゴメンな……?、そう小さい声で謝ると、小宮山は首を傾げて見上げてくる。
ニイッと笑って何でもない振りをすると、行こっ!そう語尾をはねさせながら小宮山の手を握って歩き出す。
「あ、あの……でも、不二くんもいますから……」
「ちょっとだけだからさ……?小宮山と手、繋ぎたいんだもん」
握りしめた手にギュッと力を込めると、本当にちょっとだけですよ?、なんて小宮山は嬉しそうに笑った。
「英二くん、その……そろそろ、手、離して下さい……?」
プラネタリウムに向かう途中、ずっと手を握ったまま離さないオレに、小宮山がそう小声で話しかける。
何でさ?そう返事をすると、チラチラと不二の背中を気にしながら、だって、ちょっとだけって……なんて小宮山は恥ずかしそうに俯いた。