第59章 【ドクセンヨク】
ゲッ、しっかりそこまでバレてんのかよ~!
そう、ギクッと肩を振るわせて、それから小宮山に聞かれたくなくて、慌てて不二に口止めしながら小宮山から距離をとる。
多分、小宮山はオレが他の子とLINEの交換をしたって、どっか遊びに行ったって、それどころかヤることヤったって、笑顔でそれを許してくれる。
本当はスゲー嫌なくせに、そんな想いを全部自分の心の中にしまい込んで、気が付かない振りをしてオレに好き勝手させてくれる。
それはセフレだったときからずっとで、堂々と文句を言える彼女の立場になったって、多分変わんない……
前はそんな都合のよい女が一番だって思ってたけど……
そんな関係を小宮山にも強要していたけれど……
もう、小宮山にそんな我慢させたくないから……
「ふ、不二、これはさ、浮気なんかじゃなくてさ……」
「なに?もうB級グルメやジャンクフードが恋しくなったの?」
それは前にオレが屋上で不二に言った言葉。
小宮山のナカと他の女のそれを比べて言った最低な一言。
うぐっ……って口ごもり、それから、違くてさ、そう慌てて大きく首を横に振る。
確かにあのときはそうだったけど……
どんなにヨクったって一人の女で満足なんか出来なかったけど……
だけど今は、小宮山しかいらないから……
今までヤった女たちを全員集めたって、たった一人の小宮山にはとうてい適わないから……
「見つかんないように隠れてたからさ、さっさと終わらせたかっただけなんだって!」
やっぱ、さっきのナンパ女と連絡先交換したの、まずかったな……、そう後悔しながら必死に不二に謝る。
不二だってそりゃ面白くないに決まってる。
オレのために退いたのに、オレが小宮山を裏切るようなことしたらさ……
どうだか……、そう吐き捨てるように付かれたため息からは、呆れより怒りの感情が強く感じられた。