第59章 【ドクセンヨク】
だいたい小宮山、彼氏放っといて他の男と出掛けようなんて、それって浮気じゃないの~?なんてモヤモヤして……
不二も不二で、いくら好きだからって応援してるって言ってた親友の彼女と2人きりで出掛けっかよ、なんてムカムカして……
「ねえ、なに怒ってんのー?」
ぶーってふてくされているところに、突然声をかけられて、へ?って思って顔を上げると、そこにはさっき不二に声を掛けていた軽そうな女が、ニコニコとオレに笑いかけていた。
「もしかしてすっぽかされた?」
「あー……いや、そんなんじゃないよん?」
こんな時に声なんかかけてくんなよ、なんて思いを笑顔に隠した。
愛想良い笑顔を見せるその女に、だいたい、不二に断られたからってすぐオレかよ、なんて思って、どんだけ飢えてんだよ、なんて心の中で嘲笑った。
つうか、いくら夏だからって、昼間っから肌、露出しすぎじゃねーの……?
条件反射でその女の胸の谷間に目がいくと、やだ、えっちー、なんて黄色い声を上げられて、いや、そっちが見せてんじゃん、なんて苦笑いする。
小宮山は日焼けも視線も嫌って言って、必要最低限しか肌出さないし、その分、脱いだときの?、脱がせたときの?、とにかくそのギャップがたまんねーっつーか……
小宮山にハマる前はこういう軽い女の方が断ぜん楽で、小宮山のことなんて軽い気まぐれの遊びだったんだけどな……
無意識にニイッと口角が上がると、そんなオレの笑いに誘いにのったと思ったのか、ね、どっか、行こうよ?、そうその女がオレの手を引いた。
ねー、ねー、そう甲高い声を上げられ、いや、そんな騒いだら不二に気づかれるから!そう焦って、とにかく追い払わねーとって、慌ててポケットから携帯を取り出した。