第59章 【ドクセンヨク】
たとえ付き合っていなかったとは言え、自分はさんざん小宮山以外の女と好き勝手してきて、そんでさんざん小宮山を泣かせてきたくせに、本当に勝手なんだけどさ……
小宮山が不二と、ううん、オレ以外の男と一緒に出かけるのなんか絶対我慢できなくて……
不二の祝勝会、タカさんのうちから無理やり小宮山を連れ出したあの日の帰り道、ヤキモチ?そう問いかけた小宮山に、絶対違うんだかんな!と強く否定した。
だけど、やっぱりどう考えてもこの気持ちはヤキモチで、オレってば、やっぱ独占欲強いよなー……って苦笑いする。
「不二との約束ってなんなのさ……?」
『プラネタリウムに……1時に青春台駅前で待ち合わせなんです』
先ほどの小宮山との会話を思い出す。
青春台駅前、1時……
時計を確認するとまだ十分間に合う時間で、でも流石にそれってカッコワルイよなって迷って、だけどやっぱり2人のことがすげー気になって……
ええい!考えんのなんかヤメヤメ!
オレってば直感派じゃん?
クローゼットを開けると適当な服に着替えを済ます。
いつものバッグを肩から引っかけ背中に背負うと、急いで部屋を飛び出し階段を駆け下りる。
玄関で慌てて靴を履くオレに、出かけるの?デート?そう声をかけたねーちゃんを恨めしく思ってにらみつけた。
光丘から青春台駅につくと、持ってきた小宮山のメガネを胸のポケットから取り出す。
小宮山のあの顔をずっと隠してきただけあって、変装には持って来いの黒縁メガネ。
ずっと返さなきゃって思ってたけど、今までついつい返しそびれてて……
『……や、やめて……お願い……』
急に思い出した小宮山のあん時の怯えた顔……
泣きながらオレに許しを乞うて、消えそうな声を振り絞ったその哀願すら興奮剤に変えて、ただ夢中で自分勝手な欲望を押し付けた。