第59章 【ドクセンヨク】
そういや小宮山んちにいたときに、電話でどっか行くって約束してたっけ……
『あ、それ、私も気になってました……そうなんですか?……だったら不二くんさえ良ければ一緒に……良かった……それではお願いします』
あの日の夜、シャワーを浴びて戻ると不二と電話をしていた小宮山……
ベッドの中でその声を、複雑な気持ちで聞いていた。
『あの……ごめんなさい……前から約束してて……本当にごめんなさい……』
そう申しわけなさそうに、それでいて断ることが不安なのか、何度も震える声で小宮山は謝ってくる。
「不二との約束ってなんなのさ……?」
『プラネタリウムに……1時に青春台駅前で待ち合わせなんです』
明日なら何もありませんから……その、明日じゃ駄目ですか……?、そう恐る恐る聞いてくる小宮山に、んじゃ、明日は絶対オレと約束だかんね!、そういつものように頬を膨らませて言うと、はい、必ず、そう安心したように返事をする。
小宮山は真面目だから約束を大切にするやつだし、不二のことだって純粋に友達と思っているんだし……
不二は小宮山の唯一の友達だから、その友達付き合いを邪魔すんのも悪いしな……
胸の奥はずっとモヤモヤしてたけど、そう自分を納得させて通話を終わらせた。
「ちぇー……」
携帯をベッドの上に放り投げると、そのままばふんと勢いよく自分も身体を投げ出す。
納得して小宮山と通話を終わらせたつもりだったけど、やっぱすげー胸の奥がモヤモヤして……
ギュッと大五郎を抱きしめて天井を眺めていると、不二の隣で笑う小宮山の笑顔と、その小宮山を愛おしそうに見つめる不二の笑顔がぼんやりと浮かんできて……
そんなの、絶対ヤダ!!、そう思いっきり叫びながら飛び起きた。