第59章 【ドクセンヨク】
確かに小宮山を抱きしめてキスしようとしていたはずなのに、突然目の前に現れたのはねーちゃんで……
うわぁっ!、そう驚いて叫び声を上げると、鬼の形相のねーちゃんを思いっきり突き飛ばし、小宮山は……!?、そうキョロキョロと辺りを見回す。
だけど小宮山はどこにもいなくて、ああ、夢か……そう少し残念でため息を付いた。
「……『小宮山は……!?』じゃないわよ……」
感傷に浸るオレの耳にどす黒いねーちゃんの声が聞こえて、はひっ、そう身体をびくつかせる。
つまり……夢の中で小宮山だと思っていたのは……ねーちゃん……!?
頭が働いてくれば、確かに小宮山とは違う身体の感触と、突き飛ばした衝撃がはっきり残る手の平……
ヤッベー、そう事の重大さに気が付いて恐る恐るねーちゃんに視線を向ける。
「ね、ねーちゃん、いたの……?おっはよーん……」
「いたわよ、そして、痛いわよ……?」
床に尻餅を付いたまま、ぶつけたであろうお尻をさするねーちゃんの表情は、俯いていて見えないけれど、その声の雰囲気からかなり怒っているのは間違いなくて……
「ねーちゃん……ゴメンにゃ……?」
そう恐る恐る謝るオレに、ゴメンで済んだら警察いらないのよ?、そう言ってねーちゃんは引きつった笑顔を向けると、それから、ふざけんじゃないわよ!、そう思い切り怖い顔でオレの頭にグーパンチを繰り出した。
「いってー、ねーちゃん、悪かったって!」
殴られた頭をさすりながら、んで、なんなの?襲いに来たの?、なんて頬を膨らませると、襲おうとしたのは英二でしょ!、そう更に怒らせもう一発殴られる。
「パジャマ、洗濯するんだから、速く着替えて持ってきなさいよっ!」
……誰がねーちゃんなんか襲うかっての!
バンっと大きな音をたてて出て行ったねーちゃんに、ンベッと舌を出して悪態を付くと、すぐさまガチャリとドアが開く。
……英二、そう開いたドアから顔を出したねーちゃんに思いっきり睨まれて首をすくめた。