第59章 【ドクセンヨク】
……じくん……
微かに聞こえる小宮山の声。
オレを呼ぶ、柔らかくて優しい……
小宮山……どこ……?
ふわふわする意識の中、辺りを見回して必死に愛しいその姿を探す。
「……英二くん……」
さっきより近くで聞こえた声。
だんだんと近づいてくる。
「英二くん、起きて下さい……?」
起きて……?
ああ、オレ、寝てるんだ……
どおりでふわふわしてると思った……
あれ、まだ小宮山んちにいるんだっけ……?
そっと手を伸ばすと指にふれた温もり……
みーっけ……しっかり引き寄せて抱きしめる。
「ちょ、英二くん、ダメですよ、今は起きないと……」
「やだー……もうちょっと……こうしてる……」
オレの腕の中で胸を押し戻し、相変わらず無駄な抵抗をする小宮山……
逃がさないようにしっかりと抱きしめる……
「だ、ダメですってば!!ちょっと、英二くんっ!」
「んー……うるさいよん……?、あんまり騒ぐと……キスしちゃうぞ……?」
き、キス!?そう慌てる小宮山の顔をクイッとあげると、珍しく力いっぱい胸を押し返す小宮山の後頭部をガッチリとおさえて引き寄せる。
「や、ちょっ……」
それにしても、小宮山……なんでそんなにイヤがんだろ……?
こっちもムキになって引き寄せる腕に力を込めた。
「こ……」
こ……?、そう不思議に思いながらも、小宮山の頬にふれながら首を傾けて、そのまま強引にその柔らかい唇に触れようとしたその直前……
「コラー!!、英二っ!!」
「……ほえ!?」
突然の怒鳴り声に、何事?、そう驚いて目を開けると、目の前には真っ赤な顔でオレを押し返す下のねーちゃんが見えた。