第58章 【ヒトリ】
『はひってなんだよ、はひってー!』
そう携帯の向こうから英二くんの笑い声がして、ひへ、ひはほはひはひへ(いえ、舌を噛みまして)そうますますへんな受け答えになってしまい、ハヒフヘホ星人かよー?なんてなおさら大爆笑されてしまう。
「そ、それでどうしたんですか?私をバカにするために電話したんですか?」
私が痛みで苦しんでいる間ずっと大爆笑している英二くんに、そう頬を膨らませると、まぁまぁ、怒んなって、なんて言って彼が電話の向こうでまた笑う。
『違う違う、小宮山、オレの声、聞きたいんじゃないかなー?って思ってさ』
そう電話の向こうの英二くんの声にドキンと胸が高鳴る。
英二くん、空港でLINEをくれたときもそうだったけど、私が欲しいときにまるで図ったように連絡をくれる……
どうして分かったんですか……?そうドキドキして問いかけると、オレ、小宮山ともシンクロ出来るからさ、なんて言って英二くんは笑った。
大石くんとのシンクロや、テニスのみんなと出来るもう一つのシンクロを、私とも出来ると言ってくれることに嬉しくて泣きそうになる。
英二くんは良くも悪くも、私のことを泣かせる天才なんじゃないかな……?
「凄く寂しかったんです……部屋もベッドも独りじゃ広くて……なのにネコ丸には裏切られるし……」
『何だよー、すぐに電話くれりゃ、良かったじゃん!』
小宮山のことだから、用事がない、なんて考えてたろー?、そうどこまでも見透かされて恥ずかしいんだけど、それでも私のことを分かってくれるその様子に嬉しくて胸が一杯になる。
「声、聞きたくなったら、電話してもいいですか……?」
『あったりまえじゃん!オレなんか、どんどんしちゃうよん!』
英二くんの声が耳元で心地よく響く。
ベッドに横になり目を閉じると、ここに英二くんがいるようで……
何時しかその心地よい英二くんの声に、意識がトロンとしてくる。