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【テニプリ】闇菊【R18】

第58章 【ヒトリ】




「……美味しいわね、しっかり味もしみてるし、丁寧に下処理もしている」


いただきますと手を合わせたお母さんは、英二くんが作ってくれた夕飯を口にして、それからゆっくりと味わいはじめる。


「璃音、一週間、このご飯、食べてたの……?」

「え?、あ、うん、私も一応作ったけど……」

「え、作ったの!?食べてくれた……?」


そう目を丸くして驚く母に、うん、まぁ、なんて苦笑いして答えると、それはきっといい人ね、って感心して言うから、どんな基準よ、そう言って頬を膨らませる。


「お礼、言わないとね……璃音がお世話になりましたって……」


そう声のトーンを少しおさえたお母さんの顔を目を見開いて見つめると、今度、ちゃんと紹介してね?、そう言ってお母さんは嬉しそうに笑う。


「良かったわね……ずっと泣いていたものね……」


そう、ずっと悩んでこっそり泣いていたから……
必死に平気な振りをしていたけれど、お母さんは気がついていて、それでも知らない振りをしてくれていたから……


「うん、大丈夫……もう、泣かない」


ゆっくりと呟いて、英二くんの作ってくれたお料理を口に運ぶ。
お母さんの優しさと英二くんの気遣いに、心と身体が満たされていった。








夕飯の後片付けを済ませると、自室に戻って窓辺に座り、それから夜の空を眺める。
久々のお母さんとの食卓は話すことがいっぱいで、凄く楽しく、賑やかな食卓になった。


英二くんがお母さんのお料理を褒めてくれたこと、マスコットチェーンをプレゼント交換にしてくれたこと、特別な思い出の場所に連れて行ってくれたこと……


こんな風にお母さんに英二くんの話を出来る日が来るなんて思ってもみなかったから……
ずっとお母さんに言えない私の恋愛事情が心苦しかったから……


こんな風に話せる日が来て本当に良かった……そう改めて思いながらまた空を眺めた。

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