第58章 【ヒトリ】
勝手にごめんなさい……、そう深々と頭を下げる私に、お母さんは少し間をおいて、何があったの……?そう静かに問いかける。
「璃音は、親の目を盗んでそう言うことする子じゃないもの……ちゃんと理由があるんでしょ……?」
私の事を信じてくれて、ちゃんと話を聞いてくれるお母さん。
私はなんて恵まれているんだろう……
お母さんからの無償の愛、そんな当たり前に受けれるものが、当たり前じゃないこともある……
思い浮かぶのは、とても大切で、愛しい人の辛そうな顔……
溢れる愛を惜しみなく注いでくれるお母さん、そんな母に、これからも正直に、真っ直ぐでありたいと強く願う。
「あのね、お母さんを見送ったあと……偶然再会したの……ナオちゃん達に……」
お母さんの目が大きく見開かれて、その顔から血の気が引いていく。
震える手を必死にさすりながら、動揺する心を落ち着けようとしている。
大丈夫、安心して、偶然、空港に来ていた友人たちが助けてくれたの、そう慌てて安心させるように笑顔を向ける。
「それって……前に話してくれた不二くんたち……?」
「そう……それでね、真っ先に助けてくれたのが、菊丸英二くん……」
私の大好きな人……、そう少し俯いて、それからお母さんの顔をまた真っ直ぐに見つめて、ゆっくりと呟いた。
「これね、英二くんが作っていってくれたの、お母さん、和食、食べたいだろうからって……」
お母さんに英二くんを泊めたことを話して謝りたい、そう昨日の夜に相談したとき、オレも一緒に謝るよ?そう言ってくれた英二くん。
それを断ったのは私。
疲れてるであろうお母さんにも気を遣わせるし、私の心臓が持ちそうもないから。
うーんと考えた英二くんは、だったら、そう自前のエプロンに身を包み、あっという間に数品のおかずを作ってしまった。
小宮山のかーちゃん、外食じゃない和食が食べたいだろうからさ、そう言って笑う英二くんの心遣いが嬉しかった。