第10章 【ホウカゴ】
~♪
そう着信音がなり英二くんが携帯のディスプレイを確認する。
彼の顔つきが変わり、嫌な予感が胸をよぎる。
んー……とちょっと悩んだ彼は、携帯を操作すると、その通話をうけた。
「ほいほーい、オレ、久しぶりー、……今夜?、別にいいよん?」
女の人だ……すぐにそう確信して胸が痛んだ。
この間の人かな……別の人かな……?
そう言えば私は英二くんのセフレなのかな……?
友達じゃないから違うのかな……?
そんな風に考えながら、膝の上で拳を握りしめる。
「でもオレ、最近スゲーイイコと楽しんでるから、ちょっとやそっとじゃ満足できないかんね?」
ソレって私かな……別の人かな……?
そう気になると同時に、これから英二くんはこの電話の人の元にむかうのかと思うと、思わず行かないで、と言ってしまいそうになり、にじむ涙と一緒にその言葉を必死に我慢する。
「はは、マジ?じゃ頑張ってもらっちゃおっと♪……んー……10時かな、最終で帰るから。」
ほんじゃ、いつもの店でー、そう言って英二くんは通話を終わらせると、ふふん♪と鼻歌を歌う。
やだ、本当に泣きそう……そう思いながら必死に涙をこらえた。
「英二、廊下まで丸聞こえだよ」
急に入り口から聞こえた声に慌てて2人で振り返ると、そこには英二くんの友達の不二くんが怖い顔をして立っていた。
「ゲッ、不二」
私は慌てて俯いて、英二くんは首をすくめる。
そんな私たちを交互に見た不二くんは、その冷たい視線のまま私の方をジッと見つめた。
「小宮山さんのソレ、英二がつけたの?」
ハッとして慌ててさっき付けられたしるしを手で隠すと、不二くんがフーッと深いため息をついた。
「英二が学校の外で何をしてようと僕には関係ないから目をつぶるけど、彼女は英二のオトモダチとは全然違うタイプだろ?それに学校ではそう言うの、しないんじゃなかったの?」
そう冷たい視線のまま言う不二くんに、違うんだって!と英二くんは立ち上がり、慌てて彼の元へと近づいた。