第58章 【ヒトリ】
「小宮山は……寂しくないの?オレ、帰んのにさ……」
一週間ずっと一緒にいて、とにかくずっと2人でいて、それが今日からは別々で……
もちろん今日で最後って訳じゃないし、すぐ会うつもりだけど、やっぱずっと一緒って訳じゃなくて……
なのに小宮山は本当にあっさりしていて、まるでオレだけ寂しいみたいで……
ちょっと、どころか、すげー、オモシロクナイ……
そうふてくされるオレに、あっ……って目を見開いた小宮山は、ふふっと口元を緩ませると、もちろん寂しいですよ?、そう言ってオレの胸にトンと頬を寄せる。
「……小宮山、冷たい」
「そんなことないですよ?ただちょっと母のことで頭がいっぱいだっただけで……」
すぐに抱きしめたい衝動をぐっと堪えて小宮山の肩に手を添えると、ちょっとだけその身体を押し戻す。
ふわりと甘い香りがただよって鼻の奥を刺激した。
「小宮山、変わった……前はもっとオレのこと大好きーってオーラだしてた!」
「なんですか、それ?私、そんなの出してました?」
「出してたよっ!だけど、今は……なんか全然ない!」
「ないと言われましても……」
ううん、本当は小宮山が変わったんじゃない、これはオレの気持ちの問題。
人を好きになると、こんなに不安で寂しくなるんだ……
「英二くん、大好きですから機嫌直して下さい?」
「……ヤダ」
あー、オレ、こんなのただのガキじゃん、そう頭では分かっていても、やっぱりすんなり許せなくて、どうしたら許して貰えますか……?、そう困った顔で見上げる小宮山からまた視線を逸らす。
「……キス、してくんなきゃ、ヤダ」
……何だよそれ、単なる駄々っ子。
だけどそんな頬を膨らませるオレに、ふふっと嬉しそうに笑った小宮山は、ちょっと身体を伸ばして優しくキスしてくれる。
唇に触れただけの柔らかいキス、それを首筋にもう一つ。
それから、もう一度オレの胸に頬を寄せて幸せそうに微笑んだ。