第57章 【カレカノ】
「あー、もう!お前ら、いい加減にしろよな!!」
そう拳を振り上げて大きな声を上げた英二くんは、小宮山、もう帰るよ!そう言って私の手を取り立ち上がる。
え?って思って、帰るって……?そう戸惑う私の手を引きながら、あったまきた!そう言ってぐんぐんと皆の間を縫って引っ張っていく。
「英二くん、あの……ちょっと、待って下さい、あ、あの、帰るって……?」
「帰るったら帰るの!早くっ!」
「だったら、ちゃんと皆さんに挨拶しないと……」
「挨拶とか、そんなのいーから!」
戸惑う私に構わずに英二くんはガラッと引き戸を開けると、ダメだかんな!!そう一段と大きな声を上げる。
「小宮山のこと、璃音って呼ぶのはオレだけなの!絶対、他のやつは呼んじゃダメなんだかんな!」
そう言って振り返った英二くんは、呆気にとられている皆をビシッと指さすと、ほら、帰るよ!そう言ってまたグイッと私を引っ張る。
「あ、あの、今日は御馳走様でし……」
「だーかーらー、こんな奴らに挨拶なんかいーんだってば!」
御馳走様でした、そう最後まで言い終わらないうちに、私の言葉を強制終了して、ピシャリとドアを閉めた英二くんに、ただただ呆然としてしまう。
本当にどうしたの……?
強引に腕を引かれながら眺めた英二くんの背中……
少し視線をあげると外ハネの髪のむこうに見える赤い耳……
なんなんだよ、あいつら、そうブツブツ聞こえるつぶやき声と膨らんだ頬……
ちょっと考えて思い返す。
不二くんに選んで貰った髪留めを何度もパチンと外した態度……
不二くんとのメールのやりとりを気にする様子……
そして私と不二くんの間に無理やり割り込んできたあの瞬間……
英二くん、これって、もしかして……
「……ヤキモチ?」
ピクッと跳ねた私より少し高い両肩。
ガバッと勢いよく振り返る。
あ……英二くん、顔、真っ赤だ……