第57章 【カレカノ】
「だいたい、ここは不二くんが先に座っていたんです、このテーブルに座りたいなら正面に回って下さい!」
「なにー、小宮山、オレより不二の隣がいいってのー!?」
「だからそういう問題じゃありません!」
英二くんに抗議する私と、その私の抗議に不満げに頬を膨らませる英二くんとのやりとりを、みんなが呆気にとられてみていた。
小宮山さんって、本当はこんなキャラ?なんて囁く声が聞こえたような気もしたけれど、なんか止まらなくて……
「……璃音」
突然、名前を呼ばれて英二くんと顔を見合わせる。
それは確かに私の名前なんだけど、この場に私のことを名前で呼ぶような人なんているはずなくて、そもそも私のことを名前で呼ぶ人なんて本当に限られた人だけで……
不思議に思って振り返ると、そこにはクスクスと可笑しそうに私たちを見ている不二くんがいて、えっと、不二くん……?、そう戸惑いながら問い掛けた。
「……って呼ばないの?英二」
へ?そう英二くんがマヌケな声を上げる。
だって彼女なのに名字呼びなんて、他人行儀だよ?なんて面白そうに不二くんが続けて、そうっすよ、英二先輩!なんて桃城くんが冷やかしで同調する。
「ふ、不二ってば、なに言って……オレは別に小宮山のままで……」
「ふーん、じゃあ、英二が呼ばないなら僕が呼んじゃおうかな?璃音……は流石に馴れ馴れしいから、璃音ちゃん」
いいよね?そう私に同意を求める不二くんに、それは別に構いませんけど……なんて戸惑いながら答えると、はーい、んじゃオレも、璃音ちゃん♪なんて桃城くんが言って、オイ、俺達は璃音先輩だろ、そう海堂くんがそれに突っ込む。
「璃音さん、英二のこと、よろしく頼むよ」
「璃音ちゃん、ちゃんと食べてるかい?遠慮しないで食べたいネタがあったら言ってくれよ」
「ふむ、璃音さんか……今日は新たなデータが沢山とれた、色々とな」
えっと……この流れはどういうこと……?
皆が私を「璃音ちゃん」と呼び出し、その度に、ほえ?なに?そう英二くんは焦りながら彼らの方を振り向いていた。