第57章 【カレカノ】
「ち、違うかんな!あいつらが急に小宮山に馴れ馴れしくするから、なんか腹立っただけで……」
絶対、ヤキモチなんかじゃないんだかんな!!、そう声を張り上げる英二くんはやっぱり耳まで真っ赤になっていて……
英二くん、それって、ヤキモチって言うんですよ……?
「絶対違うかんな!!」
「はいはい、ちゃんとわかってますよ?」
真っ赤な顔でドンドンと進んでいく英二くんの背中を眺めながらクスクス笑う。
その彼の仕草と、嫉妬してもらえることが嬉しくて、自然と顔がにやけてしまう。
クルッと振り返った英二くんが、信じてないなー、なんて頬を膨らませて、信じてますよ、そう私が答える。
そんな会話を何度か繰り返す。
信じてない、小宮山、絶対、信じてない……、そうブツブツつぶやき続ける彼に、あの、英二くん、そう呼びかけるとチラッと視線だけむけて英二くんは振り返った。
「『璃音』って呼ぶんじゃなかったんですか?」
その瞬間、英二くんはますます真っ赤になって、口をぱくぱくさせる。
動揺してる、今までと全然違うその彼の様子が可笑しくて、締まりのない顔がますます緩んでしまう。
「呼ぶよ、呼ぶって言ったじゃん」
「はい、どうぞ?」
「……本当に呼ぶよ?呼んじゃうよ?」
「はい、いいですよ?」
ふふっと笑う私を見下ろしながら、何度も「呼ぶよ?」と言うくせに、英二くんはなかなか呼んでくれなくて、真っ赤な顔はその度にますます赤くなっていって、繋がれた手はジンワリと汗ばんできて……
「あ~~~、もう!!」
とうとう英二くんはワシャワシャと髪をかき乱しながら、その場に座り込んだ。
「……小宮山、やっぱ、性格変わった」
「ふふ、今までのお返しです」
英二くんだって、今までと全然違う。
真っ赤な頬を手で覆いながら頭を抱える彼は本当に凄く可愛くて……
こんな英二くん、私、知らなかった。
「……名前、呼べるまで、ちょっと、待って……?」
「はい、いつまでだって待ちますよ?」
振りじゃない、自然体の英二くん……
大好き____