第57章 【カレカノ】
「わ、私……?」
「そう、小宮山さんがいれば英二は必ず戻ってこれる、僕はそう信じているんだ」
そう言って不二くんは私から英二くんに視線を移す。
それって、私が英二くんを救う存在、だからですか?そう恐る恐る問いかけると、うん、それに、もう彼女だしね、なんて不二くんは一瞬だけ目を伏せて、それからまた私にいつもの笑顔をむけた。
「か、かの!?そ、そんな、違いますよ!その、私達は……」
突然の不二くんが言い出した「英二くんの彼女」発言に、カーッと頬が赤くなって、慌ててその言葉を否定する。
そりゃ、好きって気持ちは確かめ合ったけど、彼女とかつき合っているとか、そういうのじゃないよね……?
そこまで言われてないし……でも確かめ合ったら自動的にそうなるのかな……?
香月くんの時ってどうだったっけ……?
恥ずかしくて思い切り否定してみたけれど、頭の中が沢山の疑問符でいっぱいになる。
「あれ、違うの……?僕はてっきりそうとばかり思っていたんだけど……」
そう顎に手を当てて少し考えこむ不二くんに、だから違いますよ、なんて大きく首を横に振って、その言葉をもう一度否定した。
「彼女だよん♪」
その瞬間、すぐ側で英二くんの声がして、ぐいっと肩を引き寄せられる。
突然の出来事に何が起きているのか理解できなくて、でも確かに包まれている感覚は彼のもので、え?って驚いて顔を上げると、英二くんは不二くんを押しのけて、私達の間に身体を滑り込ませていた。
「小宮山、ひでー!なんで違うなんて言うわけー?小宮山、オレの彼女じゃないのー?」
「あ、あの……だって、それは……」
この急展開と周りの視線に上手に言葉が出てこなくて、視線を泳がせ口をパクパクさせてしまうと、英二くんは更に私の肩を引き寄せる腕に力を込める。
「彼女、だよん、小宮山は、オレの……大切な、彼女……」
そうゆっくりと言葉にした英二くんは不二くんを真っ直ぐに見ていて、その力強い眼差しは真剣そのもので、不二くんに真っ先に伝えたい、そう言った時の英二くんを思い出す。
それから、英二くんの口から直接聞いた「大切な彼女」に嬉しくて涙が滲んだ。