第57章 【カレカノ】
大石くんは高等部からあの付属校に通っていて、ちょうど私と入れ違いで……
香月くんやナオちゃんたちの知り合いって聞いてたから、ただでさえ身構えていた私は、ますます意味が分からず固まってしまって……
そんな私に、俺、あんな噂を信じて小宮山さんのことを誤解していたなんて……噂に惑わされるなんて、人として最低だ、なんて大石くんは拳を震わせながら自分に怒りを露わにした。
そんな、あの学校に通っていれば無理ないですし、私、そんなこと全然気にしませんから、そう恐縮する私に、少しホッとした様子ではにかんだ大石くんに、ああ、大石くんって英二くんが大好きな親友だけあって、凄く律儀で素敵な人だなって微笑ましく思った。
「やぁ、小宮山さん、さっきはお花、本当にありがとう」
居心地の悪い中、ふーっとため息をついた私に話しかけてくれたのはやっぱり不二くんで、気を使わないで済む不二くんが来てくれたことにホッとして頬をゆるませると、やっと笑顔がみれたね、なんて不二くんは相変わらず穏やかに笑う。
「いいえ、こちらこそ、昨日はありがとうございました」
電話で英二くんのことを知らせてくれたこと、それからパニックになる私を冷静にさせてくれたこと……
昨日だけじゃない、本当に不二くんにはいつもお世話になってばかりで……
「僕は何もしてないよ?ぜんぶ小宮山さんが頑張ったからだよ」
いつもと変わらない不二くんの安心できる笑顔……
いつもこの笑顔で私の背中をおしてくれる。
いつも励まし慰めてくれる。
どんな言葉を並べれば、この感謝を伝えることができるのだろう?
どれだけ返し続ければ、この恩に報いることができるのだろう?
どうしたの?、言葉が出てこない私に不二くんはまた優しく笑いかけてくれるから、何でもないんです、そうゆっくりと首を振ってそれから私も笑顔を返す。
多分、どれもかなわない。
きっと私は、不二くんになにも伝えられない、なにも返せない。
それほど不二くんは、とても大きくて、とても温かい存在。
英二くんが私にとって遠く憧れた空なら、
不二くんはいつもすぐ側で私を支え続けてくれる大地____