第57章 【カレカノ】
「それにしても、不二くんたち、表彰式後すぐに帰って来ちゃうんですね……?」
祝勝会の時間に余裕を持って出かけると、英二くんと2人でお祝いの品を考えながら街を歩く。
せっかくだから観光とか、してこなくていいのかな……?、そう不思議に思って首を傾げると、あー……そう英二くんが苦笑いをして答える。
「昨日、オレ、みんなに心配かけるLINE送っちゃったからさ……」
あ、そうか……、不二くんもそれで私に電話してくれたんだもんね、なんて思い出して、だったら、それも謝らないといけないですね、なんて言いながら、花屋さんで不二くんへのお祝いの花を選ぶ。
「不二くん、どんなお花が好きかわかりますか……?」
「んー、やっぱ、サボテン」
「専門店じゃないんだから、サボテンのアレンジメントなんてないですよ……」
もっと時間に余裕があったなら、ちゃんとオーダーしておいたんだけどな……なんて思いながら、色々悩んで結局、無難なお花でお祝い用のアレンジメントを作ってもらう。
それからお店を移動して、空港で助けてもらったお礼のお菓子を人数分購入する私に、ほーんと、真面目ー、そう英二くんが笑うから、真面目じゃなくて当たり前の礼儀です、そう頬を膨らませた。
「あー、不二先輩の彼女……じゃない、小宮山先輩だ!」
ヤッホー、そう英二くんが河村寿司のお店のドアを開けた途端、そう中から桃城くんの元気な声が聞こえきたから、ビクッと肩を跳ねさせて、慌てて英二くんの背中に隠れる。
「桃ー、小宮山、慣れてないんだから、そーゆーの、禁止ー!!」
そう英二くんが庇ってくれるんだけど、ハッとして、あ、あの、大丈夫です、そう声をかけると、すーっと息を吸って、気持ちを切り替える。
萎縮している場合じゃない、ちゃんとあの時のお礼を言わないと……
「あの、みなさん、先日は助けていただいて、本当にありがとうございました」
そう深々と頭を下げる私に、小宮山もツンツンすんの禁止!、そう言って英二くんは私のおでこをピンと指で弾いた。